日本酒の熟成とは。火入れ前後の違いやおいしく飲める期間は?
食べ物を購入する際に賞味期限を確認する人は多いでしょう。
日本酒に賞味期限が表示されているかご存じですか。
開栓前と開栓後の熟成やおいしく飲める期間、日本酒の賞味期限表示について解説していきます。
日本酒に賞味期限表示はない
日本酒には賞味期限表示がありません。
アルコール度数が高く腐食が進みにくいため長期間の保存が可能だからです。
賞味期限の代わりに製造年月が記載されています。
製造年月は日本酒を瓶詰した月を表しています。
賞味期限についてはこちらをご覧ください。
日本酒をおいしく飲める期間
日本酒の腐食は進みにくいですが時間とともに熟成します。
開栓前と開栓後、管理の仕方、日本酒の酒質や火入れの有無によっても、味の変化に違いが出てきます。
日本酒は火入れの回数で分類される
日本酒は上槽(醪を搾って日本酒を生成する作業)後、火入れという作業を行います。
殺菌と酵素の活動を止めることが火入れの目的です。
火入れをするタイミングや回数によって名称が変わります。
通常の日本酒は上槽→ろ過→火入れ→貯蔵→火入れ→瓶詰を経て製品になります(ろ過の有無は名称に関係ないので上図では割愛しています)。
火入れを一度もしないと生酒、貯蔵前に火入れを行うのが生詰め酒、火入れせずに貯蔵すると生貯蔵酒です。
分類ごとのおいしく飲める期間
日本酒がおいしく飲める期間の目安は以下になります。
通常の日本酒 | 生酒(生貯蔵酒・生詰め酒) | |||||||||
開栓前 | 製造年月から1年 | 製造年月から半年以内 | ||||||||
開栓後 | 開栓後1か月以内 | 開栓後7~10日 | ||||||||
保管場所 | 風通しの良い光の当たらない場所 |
冷蔵庫 |
あくまで目安なのでこの期間を過ぎても大きく熟成しないこともありますし、より短期間で味を損ねてしまう場合もあります。
通常の日本酒の熟成は主に含まれる成分の化学変化が原因です。
変化の動向を予想するのは困難です。
さらに生酒は酵素の働きによる変化が加わります。
非常に複雑ですが、あえて日本酒の変化や熟成を楽しむ人もいます。
日本酒は時間が経つとどう変化する?
日本酒は上槽直後から香りや味や色が絶え間なく変化します。
生酒の期間は主に残存している酵素の働きで含有する成分をブドウ糖やアミノ酸に分解されます。
火入れ後は搾った直後に感じられた荒々しさがまるくなり、日本酒の色も次第に濃くなっていきます。
熟成しすぎると苦みが出たり、老香(ひねか)といわれる嫌な香りが出たり、日本酒は悪い方向へ変化するのです。
日本酒の熟成に最も影響を与えるのは温度で、温度が10℃上がると着色のスピードが3~5倍になります。
よい熟成をした日本酒はナッツやカラメルのような香りがし独特なコクと深みが感じられます。
熟成の面白さ
前述したように温度によって熟成のスピードは変わります。
火入れは日本酒の温度を65℃程度まで上げることで殺菌を行っているので、熟成は進みます。
火入れの目的は殺菌ですがあえて熟成を促すために行う面白い日本酒もあります。
曙酒造 天明 純米 亀の尾 2回火入れ
原材料:米、米麹
使用米:会津坂下産 亀の尾
精米歩合:65%
アルコール度数:16度
日本酒度:-1
酸度:1.6
熟成を目的としてあえて2回火入れを行っています。
ナッツやカラメルのような香りや深いコクを出すためというよりは、新酒や若い日本酒の荒々しさをとって飲みやすくするための火入れだと感じました。
程よく甘さ中心の旨味が感じられ、余韻はあるけど雑味はないです。
このように各酒蔵は様々な意図をもって日本酒を販売しています。
生酒を熟成させている酒蔵もあるくらいです。
製造年月はあくまで目安なのであまり過敏になりすぎず、気楽に日本酒を楽しんでください。